将棋におけるコンピューターと人間の違い~電王戦に向けて~

勢いでブログを始めてしまったわけであるが、想像以上に書くことが無い。例えば今日一日の様子は以下のようである。

10時に起床する。前日まで整っていた生活リズムも、昨晩四時まで寝られず一瞬で壊れてしまった。自律神経君にはもう少し頑張ってもらいたいものである。大学へ行きBEC班の作業を行う。作成した回路が動かない。色々調べるもやはり動かないので、素子が壊れていると結論付ける。まったく、素子君にはしっかりしてほしいものである。しかしその後であまりにも初歩的な配線ミスが見つかる。結局進捗はほぼ無しである。今日はつらい一日だ。地元に帰り、バイトをする。同じバイトで年下の女の子に話しかけられる。今日は最高の一日だった。

 

 

そんなわけで、今回は将棋におけるコンピューターと人間の違いについて、自分の知識の中から真面目に解説する。まず、コンピューター人間の思考の違いを述べる(もっとも、人間の思考はプロでない以上完全にはわからないのだが)。そして、そこからくる人間とコンピューターの差を序中終盤に分けて述べる。

 

ご存知のように、人間が指し手を考えるときは、①まず頭の中で指し手を進め、②進めた局面がどちらがどれくらいいいかを判断する(これを大局観ともいう)、というように行う。コンピューターも基本的には同じである。そこで、それぞれのステップでの人間とコンピューターの違いを述べる。
①指し手を進める
人間は量より質で、有り得ない指し手を瞬時に消して、1局面につき候補手を1~3手程度まで絞り読んでいく。将棋が強い人ほど候補手を直感で削っていく能力に優れていると言われている。
コンピューターは質より量、とにかく読んでいく。ただ、もちろんすべて読んでいくと量が指数関数的に(80のn乗くらいで)増えてあっというまに爆発するので、明らかに読む必要のない手は消していく。この調整が難しいようである。
②局面の評価
人間は(特にプロは)パッと見で判断してしまう。
対してコンピューターは、主に駒の損得と働き、玉のかたさ、手番などで評価している。このうち、コンピューターにとって特に難しい駒の働きの評価については、その評価項目を各ソフトが色々と工夫しているようである。なお、初心者の方には、上で述べた評価基準を用いて局面の判断をする練習をお勧めする。
一般に、局面の評価は人間のほうが(大きく)上である。


以上をもとに、序盤、中盤、終盤における人間とコンピューターの違いを述べる。

まず序盤であるが、(定跡の部分は別として)ここは局面の評価(大局観)が重要である。そのため、人間のほうが強いと言われている。ただし、過去の電王戦を見ていると、コンピューター側もそんなに負けていないように見える。例えば、しばらく形が悪くなるが、相手がどう対応しても十数手先で形がよくなる手があるとしよう。人間はその手を読むのを数手で打ち切って捨ててしまうが、コンピューターは形がよくなるところまで読みその手を選択する、ということがある。これがコンピューター側の強みの一つであると考えられる。なお、序盤の人間側の武器として、構想を練ることができる、ということもある。

次に中盤であるが、ここは一般的に手が広い。そのため、とにかく読みつくしていくコンピューターが強い。過去の電王戦でプロ側が負けた将棋では、中盤でコンピューターにリードされたことが多いように思う。もちろん、中盤においても大局観は重要であるため、人間はこちらで勝負していくことになると思われる。

最後に終盤であるが、ここは一手のミスが敗北につながることがある局面である。コンピューター側は大きな読み抜けがない。そのため、差がついた時に逆転するのはほぼ不可能である。しかしながら、人間側にも優れている点がある。それは一直線の読みである。一直線の読みとは、具体的に言うと、お互いがノーガードで攻めあったときに局面がどう進むかを読むことである。コンピューターはこの「ノーガードで攻めあう」ということが理解できないため、このような読みができない。しかし、将棋は玉をとるゲームであるから、特に終盤ではこのような読み(で速度計算すること)が重要なのである。この一直線の読みでプロ側が勝勢になったのが、今期の電王戦の第二局である。また、詰みの嗅覚も人間のほうが優れている。例えばある局面で人間側の玉に必至がかかっていて、コンピューター側の玉が数十手以内では詰まないとする。そうするとコンピューター側は自分が勝ちと判断する。しかし、本当は長手数の詰みがあったとする。プロは(恐ろしいことに)パッと見でその詰みがありそうだと気づき、実際に読んで自分の勝ちを見切ることがある。第二回電王戦第三局、船江五段対ツツカナでも、コンピューター側が自玉の詰みに気付かず、ぎりぎりで気づき軌道修正したものの逆転したということがあった(なおこの将棋は再逆転でコンピューター側が勝った)。

 

明日(今日)は電王戦第三局であるが、本稿をもとにさらに楽しんでいただければ幸いである。 

 

これここまで読んでくれた人いるんかいな。